―第十三章 平和な日常―

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シグマは静かに、ずっとベルの話に耳を傾ける。 ベルが一通り話し終えると、シグマは大きく息を吐いた。 「貴方は他のドルイドよりも特殊な力を持っているのですね。それで魔術騎士団に追われていると。 今回フェイア君についているのは、自分の居場所を特定させないため。 簡単に言えばこんなところでしょうか?」 「えぇ……」 「あの……ベルが他のドルイドより特殊ってどういうことですか?」 「君……知らないんですか?」 シグマがあきれ果てたように言う。 「いいですか。基本ドルイドはひとつの精霊と心を交わすものなのです。 複数の精霊と会話できるものはドルイドの中でも3分の1ほどしかいない。 ベルフォートさんは更に、全ての精霊と会話できる。これはとても希少な力なのです!」 シグマは立ち上がり、熱く語った。 ベルはそんなにすごいのか。 なら、狙われることに納得できる。 でもそんなこと、ベルは一言も言ってくれなかった。 どうして……? 「数百年に1人、そんな人間が生まれるか生まれないか……それくらい希少なのです! いいですか、フェイア君。ドルイドは呪文詠唱、対価もなしに強力な力を扱うことが出来る。 これは魔術師が大昔から憧れ、目指しているものなのです!」 シグマは僕の肩を掴み、激しく前後に揺する。 「いいですか、フェイア君。質問です。 魔法はどうやって発動されますか?」 「えっと……魔術師は、詠唱で精霊に語りかけ、精霊の力を借ります。 そして魔法を発動します。 そのかわり、自分の魔力を精霊に渡します。 このどちらかが欠けていては魔法は発動されず、暴発または不発に終わります」 「よく出来ました」 シグマはようやく僕の肩を話す。 僕は揺すられたせいで気分が悪くなり、吐き気を催す。
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