308人が本棚に入れています
本棚に追加
けどシグマはそんな僕は眼中に無いらしく、さらに語る。
「しかしドルイドは魔力を使わず魔法と同じ威力、いや、魔法以上の力を引き出すことが出来ます!
対価もなしに、彼らは力を使うことが出来るのですよ! これがどれだけすごいことか分かりますか?
世界は対価無しに何も手に入れることは出来ない。
物を買うにも金という代価、生きるためにも他のものの命を奪う……これも対価です。
ですがドルイドはそれを無視し、力を引き出す!
あぁ……なんて素晴らしい……」
シグマはうっとりとした表情でベルを見つめる。
ベルは軽く……じゃなく、すごく引いている。
「あぁ……調べたい……他の人間とどう違うのか。調べたい……」
じりじりとベルに近づくシグマ。
それとは反対に後ずさるベル。
距離はじわじわと縮む。
これは止めるべきなのだろうか?
僕が悩んでいると、シグマの進行が止まった。
頭を押え、うずくまる。
それを止めたのはファーだった。
「いい加減にしてください。ベルが嫌がっているでしょう?」
「嫌がってないじゃないですか! そんなこと一言も言ってませんよ!」
頭を押えたままファーに言う。
ファーの手には緑の透き通った丸い石がいくつかついた木の杖。
きっとあれで殴られたんだろう。
「言わなくても分かるでしょう? いつまで経ってもそこらへんはずれてるんだから」
ファーが溜息をつく。
「そんなの言われなきゃわかりませんよ!」
「言われなくてもわかれ!」
ファーがまたシグマを殴る。
シグマの頭から鈍い音が鳴り、シグマが呻く。
あれは痛そうだ。
「そろそろ学んでください。半端ないくらい生きてるんですから」
ファーはそう言ってシグマのフードを掴んでずるずるとベルから引き離す。
ベルはシグマが離れ、手が届かない位置に行ったのを確認してから、僕の隣に戻った。
最初のコメントを投稿しよう!