308人が本棚に入れています
本棚に追加
『あとは、報告にあった少女のことですが、ファーと貴方と共に行ってもらいます。
シグマ様は実力はありますが……個人的に嫌なので。
ファーは嫌がるでしょうが、私の命令と言ってあげて下さい。
その少女は記憶喪失だそうですね。名前も分からないのは困りましたね。
こちらでも、その少女について調べてみますが、そちらでも調べて下さい。
何か分かり次第、情報を送りますので。
シグマ様には帰還するよう伝えてください。
どこにも寄り道せずにと。
よろしくお願いします。
では、貴方の旅に精霊の仁慈があらんことを。
フロージア・フィオーレ』
個人的に嫌って……私情が入ってますよね、フロージア様。
それでいいのかとか思うけど……きっといいだろう、うん。
僕はこの手紙をファーに渡す。
ファーは2枚目を見たとき、あからさまに嫌な顔をしたが、何も言わなかった。
黙ってそれをシグマに渡す。
シグマは1枚目は見ずに、2枚目を見る。
そして小さくガッツポーズをしたのを僕は見逃さなかった。
けどすぐに、その下の文章を読んで、めんどくさそうな顔をする。
すぐ帰って来いって言うのを読んだんだろう。
なにか不満そうに呟きながら、手紙を僕に返した。
僕は受け取り、懐にしまう。
「フロージアの判断なら従うしかないね……」
ファーは溜息をついてから、僕のほうに近づく。
性格には僕の後ろに半分隠れている少女だけど。
「あのね、君は私に付いてきてもらうことになるんだけど……いいかな?」
少女は答えない。
頷きも、首を振りもしない。
けど、僕の服を掴む力は強くなった。
最初のコメントを投稿しよう!