―第十三章 平和な日常―

7/19
前へ
/392ページ
次へ
「嫌かな? 君の住んでいたところも探すんだけど……」 少女は反応しない。 ファーが諦め気味にうつむいた時、少女の手元に視線がいったのを僕は見た。 それから笑顔を作り、少女に話しかける。 「この彼も私と一緒に来るんだけど」 少女は僕とファーを交互に見る。 「私についてきてもらえるかな?」 少女はしばらく黙った後、頷いた。 それを見たファーはよろしくと手を差し出すが、少女は顔を背ける。 ちょっとむかついた様子だったけど、ファーは僕を見るとにやりと笑う。 そしてファーは少しニヤニヤしながら、僕達から離れた。 何でニヤニヤしてたのか、僕には分からない。 まぁ、これでファーとシグマが喧嘩することは無くなった……と思いたい。 「よう。なんか賑やかだな」 「ギルガ!」 ベルがギルガに駆け寄る。 ギルガは腰に巻いたベルトに、かなづちや釘などの道具をつけている。 「馬車は出来たの?」 「そんなに早くできるわけなぇだろ? 今は休憩中なんだ。でも、今日中には出来るぜ。 馬はいないけどな」 ギルガはベルの頭をわしゃわしゃと撫でる。 こうやって見ると、本当に親子みたいだ。 ベルも一座のみんなに会えて嬉しそうだし。 僕も少し家族に会いたくなってしまう。 兄様や父様は今頃どうしてるだろうか。 ライアや他のみんなも。 元気だといいな。 僕は溢れそうになった涙を拭った。
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!

308人が本棚に入れています
本棚に追加