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「よう、フェイア」
僕の隣に誰かが座る。
僕はそっちを見た。
「メイス!」
「よっ」
僕の顔は綻んだだろう。
「久しぶりだね!」
「昨日寝る前に声かけようと思ったんだけどさ、なんか知らないおっさんがいたし、その後にはそこの女がいたから、タイミング逃したんだよ」
「そっか。でも、こうやってまた会えて嬉しいよ!」
「俺も。ちゃんとベルを守ってくれてるみたいだしな」
メイスは僕の肩を叩く。
守ってるんじゃなく、守られてる気がするけど……言ったら殴られそうだから止めておこう。
「で、お前はどんくらい強くなったんだよ?」
「僕?」
「そう、お前」
メイスはニヤニヤ笑っている。
「そんなに強くはなってないと思うけど……とりあえず……一応はマスターに……」
僕はどもりながら答える。
マスターという称号に、僕の実力が追いついていない気がするから。
「マスター! まじで! お前すごいんだな!」
「そんなことないよ」
「いや、すげぇよ! てことは、あの人と同じくらい強いんだろ?」
メイスが指差したのはファー。
そういえば、ファーもマスターだった。
「すげぇな!」
「そこまで僕は強くないって」
そう、僕は強くない。
ベルには守られてばかりだし。
マスターといても、まだまだ未熟。
実力的には、アルケミストとなんら変わらないだろう。
ファーになんて追いついてもいない。
だから僕は強くない。
「フェイア?」
メイスが困った表情で僕を見る。
僕は我に戻り、笑って誤魔化す。
「ちょっと考え事してた。そういえば、メイス達はどうしてこの村にいたの?」
僕は話題を変えた。
これ以上、僕に対して変な期待を抱かれたら嫌だから。
多分抱かないとは思うけど。
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