308人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺達? そりゃぁ公演に決まってるだろ。
俺達北のほうから下ってきたんだ。お前達と別れた後、俺達は北に行ったんだ。
でも北って暗いのな。どこの村や町でも、俺達を見る奴は少なかった。
だから下りてきたんだ。こっちのほうが儲かるからな。
あと……」
「あと?」
「なんかさ、昔と変わってるんだよ」
メイスは僕だけに聞こえるように囁く。
「なんていうか……雰囲気とか……全体的に暗くて重いんだ。それに、北では明らかに襲撃が多かった」
「襲撃?」
「魔術騎士団だよ。ベルはいないのに、何度も狙われたんだ。そしてここではついに捕まったんだけどさ」
また魔術騎士団。
こいつらの目的はなんなんだ?
ベルだけじゃなく、一座の全員を狙っているんだろうか?
でも、ここまで逃げてきたのに、今回はなぜ捕まったんだ?
「ここでなにかあったの?」
「いつもと違ったんだよ。明らかに強い奴が1人いた。
フードを深く被ってて顔は見えなかったが、命令してる声が聞こえたんだ。
あれは女だった。俺達とそう変わらないくらいの。
で、相当強い魔術師だと思う」
「だと思うって……確信は無いの?」
僕は聞いた。
「ない。全部無詠唱だったから。だから相当強い魔術師だと思ったんだ。
もしくは……俺達と同じ奴か」
「ドルイド……?」
「でもいろんな精霊の力を使ってたから、多分魔術師。
ベルみたいなのはそういねぇからな」
「そっか……」
シグマもベルは珍しいと言っていた。
そう簡単にいるような人ではないのなら、魔術師の可能性が高い。
でも魔法を全て無詠唱はかなりの実力の持ち主だ。
エレメント級の力。
そんな奴に会ったら僕は……絶対勝てない。
いや、僕だけじゃなく、他のみんなだって……。
そいつには会いたくない。
最初のコメントを投稿しよう!