―第十三章 平和な日常―

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「俺達? そりゃぁ公演に決まってるだろ。 俺達北のほうから下ってきたんだ。お前達と別れた後、俺達は北に行ったんだ。 でも北って暗いのな。どこの村や町でも、俺達を見る奴は少なかった。 だから下りてきたんだ。こっちのほうが儲かるからな。 あと……」 「あと?」 「なんかさ、昔と変わってるんだよ」 メイスは僕だけに聞こえるように囁く。 「なんていうか……雰囲気とか……全体的に暗くて重いんだ。それに、北では明らかに襲撃が多かった」 「襲撃?」 「魔術騎士団だよ。ベルはいないのに、何度も狙われたんだ。そしてここではついに捕まったんだけどさ」 また魔術騎士団。 こいつらの目的はなんなんだ? ベルだけじゃなく、一座の全員を狙っているんだろうか? でも、ここまで逃げてきたのに、今回はなぜ捕まったんだ? 「ここでなにかあったの?」 「いつもと違ったんだよ。明らかに強い奴が1人いた。 フードを深く被ってて顔は見えなかったが、命令してる声が聞こえたんだ。 あれは女だった。俺達とそう変わらないくらいの。 で、相当強い魔術師だと思う」 「だと思うって……確信は無いの?」 僕は聞いた。 「ない。全部無詠唱だったから。だから相当強い魔術師だと思ったんだ。 もしくは……俺達と同じ奴か」 「ドルイド……?」 「でもいろんな精霊の力を使ってたから、多分魔術師。 ベルみたいなのはそういねぇからな」 「そっか……」 シグマもベルは珍しいと言っていた。 そう簡単にいるような人ではないのなら、魔術師の可能性が高い。 でも魔法を全て無詠唱はかなりの実力の持ち主だ。 エレメント級の力。 そんな奴に会ったら僕は……絶対勝てない。 いや、僕だけじゃなく、他のみんなだって……。 そいつには会いたくない。
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