6人が本棚に入れています
本棚に追加
遂に心臓と肺が限界を迎えて立ち止まったニコは、周りの光景を見て驚いた。町の中を走っているつもりが、気が付けばそこは木々に囲まれた森だったのだ。
切れた息を整えつつも後ろを振り返る。自分の通って来た道も、跡もない。あるのはどこまでも続く茶色と緑のコントラストだけ。
「ここは……」
ニコは急に不安になって俯いた。
リリアーニャの近くにある森は魔女の森しかない。そして今ニコがいるこの森は唯一リリアーニャの近辺にある森だ。
「そんな……魔女の……森?」
はっ、となってニコは顔を上げる。いつの間にか集まってきた小動物達が静かに、そして一心にニコを見つめていた。
木の枝に数羽の小鳥が止まり、言葉を交わすようにさえずった後、同じように目を向けてくる。この不気味な光景を目の当たりにしたニコは背筋に激しい悪寒が走るのを感じた。小刻みに震えだした両足を気持ちいっぱいに動かして、静かに後退を始めた。
「わ、わああぁぁ!」
数歩後退した後、踵を返して再び全力疾走を開始する。でこぼこして不安定な足場に躓いて転びそうになるながらも、ただ出口を求めて走り彷徨う。
最初のコメントを投稿しよう!