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「あの……河辺さん、ですよね?」
突然、あの子が話し掛けてきた。
な、なぜ僕の名前を!?
僕は恥ずかしくて、慌てて本を読むフリをした。あの子は申し訳なさそうな顔をしていた。
「すみません…この間お財布を置いていかれた時に、お名前を……」
「…………」
「それ、逆さまですよ?」
「!!!!!!」
あまりに動転して全く気付かなかった。
あの子はクスクスと笑っていた。
ああ……なんて可愛いんだ…
手に持っている真妃露の本が霞んで見えるほどだ…
すると、あの子はまた僕に話し掛けてきた。
「それ、カンノマヒロですよね?」
「えっ……」
「僕の名前、ジンノって同じ漢字なんですよ。」
「へ、へぇー…」
「あと、僕の名前もマヒロって言うんですよー」
「えっ、ええええええ!!!???」
そんな…まさか、まさかぁぁ!!
「僕も驚きましたよー!この前陳列してて初めて知ったんです!僕は平仮名ですけどねー」
きっと森山氏ですら、この状況は萌え死なさるはずだ。
「それからずっと気になって…河辺さんの事も覚えちゃいました」
あの子…いや、まひろくんが僕の顔を見ながら笑顔を浮かべてくれる。
背中がゾクゾクする。風邪ではなく。
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