2477人が本棚に入れています
本棚に追加
走る、走る、走り続ける。
草や植物を掻き分ける、後ろから罵声と足音が聞こえる、振り向くことは出来ない、怖い気配が背中を逆撫でしている。
何度も転び、何本もの枝で切り傷を負ったが構わず走り続けた。素足だった足は皮が無くなり身が剥き出しだった、出血も少なくない筈だった。それでも構わず走り続ける。
耳をすませると罵声が近づいた気がする、研ぎ澄まされた聴覚が距離を伝える。もう、追い付かれそうだった。
それでも少女は走り続けた、何度も木々に頭を打ったが構わず走り続けた。
「あっ──!」
刹那、足に浮遊感、そして気づいた、自分は崖から落ちたのだと。
恐怖は来なかった、少女は死んでも構わないのだ。今まで死よりも恐ろしい目に幾度も曝されてきた少女には、既に死に対する恐怖心が麻痺していた。
純粋な心を持っているにも関わらず、このような仕打ちに会う少女に神は手を差しのべることすらしなかったのだろうか。
憐れ少女よ・・・ただ運が悪かったのだ、誰もがそう思うだろう。
少女の目から涙が零れた、丁度天を仰ぐ形で落ちていってる為零れた涙が月の光に反射して輝いていた。
ゆっくりと眼を閉じて、少女は意識を手放した。
最初のコメントを投稿しよう!