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少女が落ちたところから眼下を覗く二人の男がいた。
「くそっ!折角の商品だったのに!」
歯軋りして地団駄を踏む男を諭すようにもう一人の男が肩に手を乗せた。
「もうよい、たかが一人欠けたとこで痛手を負うわけでも有るまい。それよりも早く山を下らないとあれが出るぞ」
暴言や罵声を吐いていた口がその言葉を聞くと途端にキュッと唇を閉じた。
「・・・っ確かこの辺りだったよな?最後の被害者は」
「ああ、骨すら残らなかっただとよ。有ったのは焼き焦げた衣服の跡だけ・・・やっぱり噂は本当らしいな」
大の男二人が怯えた様子で肩を震わせ始めた、はてさて彼らの言う『あれ』とは・・・。
山の近くの城下町に知らぬ者は誰一人いない噂があった。
見た者によれば夜風に揺れる白銀の鬣(たてがみ)。
紅き眼光と殺気を孕んだ眼。
岩のような巨体に釣り合う大きく無骨な手。
先が槍の切っ先に見紛うほどの鋭い尾。
無骨な手に斬首刀を思わせる太く鋭い鉤爪・・・。
初めて聞かされる者でもこのキーワードを並べれば怪物以外に思いつかないだろう。
「長居は出来ん、さっさと引き返そう」
二人は慌てた様子で元来た道を引き返していった。
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