+日常と告白+

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************** 先ほどから後をつけられているのは自覚していて、それでも気にせずに誘導されるままに歩いていた。 少し先には実体を伴わない雀が焦りながら飛んでいる。時折急かすようにピチピチと鳴きながら。…実際急かしているのだけど。 「大丈夫、まだあなたの子供は生きてるわ。それよりそっちからじゃ私が通れないの。ちょっと待って。」 綺麗に整えられている植木の上を行く彼女はこちらにまで気が回っていなかったらしく、一瞬きょとんと振り返った。くすりと苦笑して植木の壁を回り込む。 責めはしない。それだけ愛情が深い証拠だから。 急いで植木を回りこむとすぐさま雀は進み出した。大分近づいているのかけたたましく鳴きまくっている。早く早く!と言葉になって聞こえている気がした。 「もうちょっとあっち?大丈夫、急かさないで。私が絶対助けるから。」 気づいたらもう校内の端の方まで来ていて、あとは敷地を取り囲むように植えてある大小まちまちの木があるだけだ。きっとこの辺りに彼女の子がいるに違いない。 耳を澄ますと小さく母を呼ぶ声が聞こえた。 「あっちね。ちょっと待ってて。」 その声の主に届いたかは判らないが、小さく声を掛けて、急いで巣に向かう彼女を追い掛けるために立ち塞がる植木をかき分け始めた。  
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