+日常と告白+

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俺はこれからどうすべきか考えこんだ。頭を抱えて。 誰かに言うのはまずい。だったらそっとこの場から離れて何も見なかったことにしようか。いやいやそれじゃあ俺の後にもし誰かがヤツを発見したときに、心ないことをしかねない。 ……なんだか俺の方が思い詰め始めた気がする。 おかしい。何故俺があの失礼な女の為にここまで頭を痛めにゃならんのだ! 勝手ながら恨めしく思って再び視線を戻すと、さらにとんでもないことが起こっていた。 「――…何やってんのッ!?」 俺は自分が隠れていたことも忘れて飛び出していた。声だって必然的にでかかったわけで、ヤツはこちらを振り返った。 「うわバカッよそ見すんな!そんなことよりも自分の手に集中――」 ズッと、その思ったより白くてきしゃな手が空を切った。 必死に木登りに精を出していたヤツは、俺の声に油断してしまったらしいというのは全てが一段落してから気づいた訳で、この時俺は反射的に両腕を広げて、無我夢中でヤツの落下予定地点に踏み込んでいた。 ――頭が真っ白になりながら、驚愕に目を見開いたヤツと視線が交錯した。 その瞬間だけ、時間がやけにゆっくり流れて。  
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