+日常と告白+

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「…あの…ありがとう。ごめんなさい。」 なんだこんな時は礼儀正しいのか。美人のしおらしい態度に若干怯んでしまう。もう俺イヤ。 「……別にいいけどね。取り敢えず、木登りは危ないからやめてくれ。土は存分に掘ってくれて構わないから」 「……え?」 美人の顔が固まった。あ、まずいストーカーしてたのがバレた!いや別にやましい思いがあった訳じゃないけどさ、こういう時って何か濡れ衣着せられることって多いし! 「べ、別に下心があってつけてた訳じゃないからな!ちょっと声が聞こえて気になっただけで…」 慌てて弁解を試みるが、どうやら俺の心配……というか、焦りは不要だったらしい。ヤツの視線は俺を通り越してその背後に注がれていた。 「……それ…。」 凍りついた目を静かに震わせて、ヤツは小さく指を指す。反射的にそっちを向けば、血のついた枝があった。 ……見なけりゃ良かった…。 それが何を意味しているか悟った瞬間、若干だけ弱まっていた疼痛が元気よくぶり返す。自分の背中で起こっている状態を想像しちゃったもんだから、痛み増加。 「……あー…ブレザーが血濡れに…。」 恐る恐る背中を見れば、貫通された濃紺の上着に黒い模様が浮かび上がっていた。素敵なことに範囲が徐々に広がっている模様。 ……今のは駄洒落じゃないっすから。  
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