+日常と告白+

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ぼんやりする意識を無理矢理引き寄せて肩口にある頭を見る。俯いてるから旋毛は見えなかった。変わりに微かに震えている背中に気づいて、俺は眉を寄せた。 「……泣いてんの?」 ちょっとストレートに聞きすぎた!同じ状況で同じことを妹に言ったら、張り倒されること間違いない。 「…泣いてない。」 平手打ちを覚悟した俺を迎えたのは意外な反応だった。一瞬ビクッと肩が震えたから確実に報復を受けると踏んでキツく目蓋を閉じたのに、冷静な言葉と共に肩を額で軽く押されただけだった。 さすが、高校生と中学校は対応が違う。……比べるのも失礼か。 爽やかな風が花粉を運びまくって鼻がだんだんむずむずしながら、俺は必死に話題を探した。この体制での沈黙が続くようなら、気まずいすぎて意識を飛ばしかねない。もちろん怪我のせいってのが大きいけど。 「……えっと…なんでこんな所に」 「保健室。」 「そう保健室にいて……はい?」 今何て仰いましたか!?ここは校舎内でも、ましてや保健室なんてピンポイントな所でもない。むしろそれは今の俺に必要な場所だ。 「…保健室、行かないと。このままじゃ悪くなるから。」 ああ、そういうことね。 すぐに察することが出来なかった辺り、本当に思考能力が低下しているらしい。 脂汗もいっこうに引く気配がないし、疼痛は徐々に酷くなっている気がする。抵抗する気力が弱ってんのかも。  
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