+日常と告白+

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「春日くん、私思うんだけど…。」 「なん、でしょう。」 保険医は至極真面目に主張した。 「ナンパするなら二言目には名前を聞くべきだと思うわ。」 スミマセン頭痛くなってきました。バファリンはどこですか? 頭を押さえる俺に、ヤツは静かに言った。 「凉城、蛍。」 「すずしろ…けい。漢字は?」 「凉しい城に、蛍。」 「へぇ…綺麗な名前だ。」 ニッと笑い掛ければ、何故か反らされた。やっぱり汗まみれで息上がってるから不細工だったのか。 顔を反らしたくなるほどの不細工……ちょっとショック。 「俺、は……春日、那音。春の日、に、那覇の…那と、音。」 「音…?珍しい名前。」 「よく、言われる。」 直人が一般的なのに、母さんはわざわざこっちにした。いわく、珍しい名前をつけてみたかったらしい。 音は父さんが考えて、漢字は母さんがつけた。全く、変わり者の母さんらしい。 「妹の、名前…は、華音。華に、音。」 『那』が綺麗なって意味だから、俺の名前に掛けて父さんがカノンと名付けた。ちなみに、やっぱり漢字をあてたのは母さん。 「綺麗な名前ね。」 フワリ、と。ヤツの微笑みを目撃してしまって、思わず心臓がドクンと鳴った。  
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