+日常と告白+

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「とにかくね、こいつは頭は悪いけど体育バカなだけで顔はそこそこに良いわけなの。」 「……お前褒めてんの?けなしてんの?」 体育バカなのは認めるが、頭はそんなに悪くない。 半眼になった俺を丸無視して悠輔は続ける。 「しかも俺はそんなことをストレートに言うのはどうかと思うわけ。 いくらバカっぽくて何にも考えてないようなこいつでも、根は優しいし注意されたらちゃんと反省するし酷いこと言われたら傷つくんだよ。 ……那音に、謝ってくれる?」 「悠輔…」 なんか目頭が熱くなってきたぞチクショウ…っ!俺は最高の親友を手に入れたぜ!!節々のけなし言葉がちょっと気になるけどっ! 「…そう。不快にさせてしまったなら悪かったわ。ゴメンなさい。ちょっと忠告してあげたつもりだったんだけど。」 さして反省しているようには見えない態度で彼女は言った。端々で気にくわない女だ。表情変わんないし。 でも、気になることがあった。 「……忠告?」 訝しげに問った俺に彼女は感情の読めない瞳を真っ直ぐに向けて、厳かに言い放った。 「…今日は、大人しくしていたほうが良い。」 そう言ってくるりと踵を返して行ってしまった。 「……なんだあいつ。」 その時の俺にはまだ、その言葉の意味がこれっぽっちも分かっていなかった。  
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