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暫く遊梨は黙ったままだった。 泣きそうになった、弱い心を抑えた。口を開けば今にも溢れてしまいそうな気持ちを堪えた。 『遊梨、ばいばい..』 俺は遊梨に手を振りながら言った。そして机の横にかけている鞄を勢い良く取り教室のドアを開け、ひたすら走った。 最近、走ってばっかりだな なんて考える余地もなかった。 ────遊梨と昔、よくここに来てたな。 家の近くの橋の下。 風が気持ち良くて、鳥の囀ずりが聞こえる。 俺はこの場所が大好きで、初めてこの場所を教えたのも遊梨だった。 だから遊梨と俺の秘密の場所。
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