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「春の過ごしやすい日々と共に夏の暑さも混じってきました。明日から、お待ちかねの人も多いでしょう‥ゴールデンウィークが始まりますが、皆さんは連休をどのように過ごされますか?」
テレビのアナウンサーが、得意の営業スマイルで言う。
さすがに朝の美人アナウンサーを見ても、テンションは毛ほども上がらない。
椅子に腰掛け、大きな欠伸をする青年。
まだ朝の5時を軽く回ったところで、普通の学生であれば眠っていたいだろう。
だが青年は、カッターシャツのボタンを留めてはいないものの、制服に着替えていた。
「あ~あ。不健康だな‥‥」
青年は、どこを見るでもなく、意識のこもっていない瞳で視線を淡く一点に集中していた。
「健全な男子高校生は、妹の為に朝食を作ろうと早起きはしないだろう。不健康だな‥‥」
そう言って、重い腰を上げて椅子から立ち上がると、おもむろにキッチンへ向かう。
「う~む。不健康かつ不健全だな、俺って」
テーブルに並べた、少し豪華な朝食を前にして、そうこぼして溜め息を吐く。
階段を下りてくる足音。
「ふぁ~あ。あ、おはようございます、兄さん」
パジャマ姿で、自室から起きてきた少女が、眠気のまだ残る重い瞼で笑いかける。
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