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「おはよ、美唯(ミユ)」
美唯に笑顔を向ける、"兄さん"と呼ばれた青年。
その瞳は、未だ眠気に苛まれているようで、起床したばかりの美唯よりも、瞼は重く、目尻は少し垂れていた。
だが、制服の上からドクロのエプロンを着け、その朝食を作っていることは確かだった。
「もう出来てるぞ。早く食べろよ?学校に遅れるから」
椅子に、欠伸をしながら腰掛ける美唯は、目の前に並べられたスクランブルエッグや彩り鮮やかなスープを見て、思わずこぼれた笑みで言う。
「相変わらず美味しそう‥‥兄さんの料理が楽しみだから、毎日の食事が待ち遠しいです」
「はいはい。いただきます」
スッと両手を合わせ、目の前の料理に感謝を伝える。
料理をそれぞれ一口頬張ると、絶妙な味付けが施された朝食のそれぞれが体に行き渡るような感覚を覚える。
「やっぱり、兄さんの料理はどれをとっても美味しい物ばかり」
幸せそうに頬を緩めて、料理の味を喜ぶ。
「お~い、美唯。ゆっくり味わうのもいいが、自転車で送っていく俺の身にもなれよ‥‥」
溜め息と一緒に、苦笑をこぼして水を口に運ぶ青年。
体に染み渡るとはこういうことなのかと実感する。
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