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「朝、妹さんを乗せて、学園に急いでくるのは分かります。ですが、せめてネクタイはすぐにつけれるよう、カッターシャツのボタンは閉めておいていただけると、私も指導を軽めに出来る‥‥」
「これでいいか?」
最後まで言わせず、ボタンを素早く留めてホック式のネクタイをつけた。
「あ、は、はい‥‥」
その無愛想な言い方を風紀委員長にしたせいで、瞳に涙が溜まっていた。
よほど悔しいのだろう。
それに気付いた、風紀委員長のファンだと考えられる男子生徒と女子生徒たちが、青年の周りに集まってきた。
「風紀委員長を泣かせるな!」
「あなたの為に注意してくださったのに‥‥」
「それに対してそんな無愛想な対応をするなんて‥‥」
様々な生徒たちに迫られて、青年はたじろいで後ずさる。
そのタイミングで、チャイムが校内に鳴り響き、生徒たちは校舎へ吸い込まれていく。
青年の周りを囲んでいた生徒たちも同様に、解散して校舎に入る。
解放された青年と、溜まった涙を指ですくい取る風紀委員長の金髪女子生徒。
「ま、まぁその‥‥」
その状況を打破しようと、青年は難しい顔をして慎重に言葉を選ぶ。
「今度からちゃんとしてくれば問題ねぇんだろ?」
「う、うん‥‥」
「‥‥努力する‥‥」
自転車を置きに向かい、すれ違いざまにその言葉を囁いたため、風紀委員長は驚いて顔を上げる。
青年の後ろを、美唯はトコトコとついていく。
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