邂逅

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ブーーン 部屋の片隅の扇風機が音を立てて首を振る。 まさか扇風機自身、今日みたいな春の陽気が心地いい日に自分の出番が来るとは思っていなかっただろう。 「うー、熱い……」 まだ口がヒリヒリする…… 俺は口を押さえながら唸る。 しかしその体はコタツの中に収まっている、別に俺がアホなのではない。 もし俺がアホなのだとしたら同じように唸りながらもコタツに入っている二人の友人もアホという事になってしまう。 「まだ時期的にキムチ鍋はキツかったか……」 隣で公太が呟く。 「何言ってんだ。我慢大会は季節はずれな程楽しいんだよ」 今度は逆サイドから尚人がカッカッカッと笑う。 そう、俺たちは春の真っ昼間にも関わらずコタツに入りキムチ鍋を囲んで我慢大会を行っていた。
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