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黒い雲に覆われた空、紫の稲妻、真っ赤な月、蝙蝠の様な翼を生やした 魔物。
そして、叫びの絶える事の無い――――漆黒の城。
此処は「魔界」と呼ばれる世界。
人間が住む世界と、神の住む世界の下にある世界。
この世界に光は届かず、一日中 暗闇に包まれる、朝の無い世界。
そんな世界の「死の森」と呼ばれる真っ黒な木々の生える森林の中を、一人の少年が歩いていた。
腰まである流れる様な黒髪を靡かせながら、少年は ずんずんと歩き続ける。
「――――静かだな……」
ぽつりと呟き、少年は 森と同じ色の漆黒のマントを取り出し、すっぽりと被った。
フードを目深に被って 身体全体を隠した少年は、脚を深く踏み込んで、地面を強く蹴る。
すると、そこに少年の姿は無く、直径1メートル程のクレーターが出来上がる。
少年は 物凄いスピードで 森を疾走した。
先程居た場所から、既に3キロは離れているだろうか。
人間離れした身体能力だ。
「たしか こっちの方角から 気配がしたのだが……。
―――ん?」
フードの下で呟いた少年は、何かを見つけたらしく、地面の土を えぐりながら ブレーキをかける。
「見つけた」
少年が見つめる先には、一体の魔物が 地面に掘られた穴に 何かをコソコソと 隠している。
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