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「…なんか…申し訳無いな、アジェ…」
暗闇の中、蝙蝠の様な翼を生やした人物…アジェが、リュヌを背中に乗せて大空を飛んでいた。
先程 部屋の窓から飛び降りた途端、アジェはリュヌを背中でキャッチした。
リュヌも勿論空を飛べるのだが、「少しでも魔力を温存して下さい」と、アジェが気遣ってくれたので、こうして乗って居る。
家臣とはいえ、背中に乗せてもらうのは…やはり 気が引ける。
リュヌが謝ると、アジェは くすくす笑いながら 首を横に振って、背中を見上げた。
「お気になさらないで下さい。
仕事とはいえ、せっかくの休息が駄目になってしまったのですから…。
私からの ささやかな 計らいです」
リュヌは 一瞬 ぽかんとしたが、「ありがとう」と言って 微笑した。
それから暫くは 互いに無言だったが、何かを発見したアジェは、背中に向かって声をかける。
「リュヌ様、集落が見えてまいりました」
それを聞き、リュヌは険しい表情で頷いた。
「ご苦労だったな、アジェ。
此処からは 自分で飛ぶ」
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