紅き月光を浴びて…

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――― 何処だ? 此処は…。 俺は 真っ暗闇の中を、一人 ふわふわと浮かんでいる…。 現実味の無い…そんな世界だ。 ――― とにかく なんか行動しなきゃな…。 浮かんだままの俺は、腕と足を使い、泳ぐ様に移動する。 すると、いきなり目の前が光り輝き、映像の断片らしき物が現れた。 断片は俺に近付いてきて、俺の頭に吸い込まれる様に入って来た。 ―――!? これは…!? 俺が見た…というか、頭に浮かんできたのは、昔の記憶だった。 俺は無意識に瞼を降ろした。 「五月蝿い!!泣くなって言ってるでしょ!?」 真っ暗で質素な家の中、一人の若い黒髪の女性が、泣きじゃくる男の子を棒で叩いている。 男の子の 肩まである黒髪は埃で真っ白になり、身につけている服も 所々破れていた。 「はぁっ…はぁっ…! ったく、あんたなんか 生まれなければ良かったのに!!」 男の子は ただ泣きじゃくるだけで、その場から動こうとしない…。 その時、勢いよく扉が開き、5体の魔物と 膝裏まであるピンクの髪、白い肌が 真っ赤な唇を引き立てている女性が入って来た。 「な、なんで魔物が こんな所に…!?」 男の子を叩いていた強気な表情は消え、青ざめる女性。 男の子は泣き止み、目を見開く。 『魔王様、ただの人間です』 魔物がピンク色の髪をした女性に うやうやしく頭をさげて そう告げると、魔王と呼ばれた女性は溜息をつき、 「じゃ、食べちゃっていいわよ」 と言って、魔物達の一歩後ろにさがった。 .
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