紅き月光を浴びて…

23/31
前へ
/634ページ
次へ
黒髪の女性は満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた。 「勿論です!! こんな薄気味悪い子供なんか、此処に居ても邪魔なだけなので」 魔王は嬉しそうな母親を訝しげに見つめた。 「まぁ私にとったら願ってもない事だけど…貴女、一応この子の母親でしょ? この子を愛してないの?」 「何故 愛さなくてはいけないの!? この子は魔力を持ちすぎた化け物よ! 夜眠っていると、魔力のせいで家具は空中に浮いては部屋を飛び回るし、他の人の考えを読めてしまうし…。 とにかく いらないの!!」 顔を真っ赤にして まくし立てる女性。 魔王は感情のこもっていない眼差しを女性に向け、口を開く。 「…私は人間の心など理解出来ないけど、貴女の言う事全てが 釈に障るわ。 こんな素晴らしい子供を授かったのに、よく そんな事が言えるわね…」 男の子の頭を撫でる魔王に、女性は嘲笑した。 「その子と暮らせば分かるわよ! いらなくなったら…食べるなり何なりすればいいわ」 女性を暫く見つめたあと、魔王は男の子の目を見て話し出した。 「―――…坊や、私と一緒に魔界に来てくれる?」 アザだらけの顔で魔王を見上げる男の子は、迷っている様だ。 「僕、きっと魔王様に迷惑かけちゃうよ…? 化け物だからさ…」 「坊や、貴方は化け物じゃないわ! その魔力は 素晴らしいものなの。だから、迷惑がかかるなんて考えないで、私と一緒に魔界に行きましょ?」 魔王の温かい笑顔に男の子は微笑すると、コクンと頷いた。 「いい子ね、坊や。それで、坊やの名前は?」 男の子は ちらりと黒髪の女性に視線を送ると、深呼吸して 呟く様に言った。 「…リュヌ…」 .
/634ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53091人が本棚に入れています
本棚に追加