紅き月光を浴びて…

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「リュヌって名前なのね。 この子を愛してない割りには、なかなか可愛い名前をつけるじゃないの」 魔王は女性を見て嫌みっぽく言った。 「…まさか こんな化け物だとは思わなかったからね…。 それより、さっさと出ていってよ!! その子、目障りだから!!」 魔王は顔をしかめると、魔物を引き連れて 家を出た。 「ったく、なんなのよ あの人間はっ!! 頭にくるわ!!」 『魔王様、お気を お鎮め下さい』 『リュヌ様の前でございますし…』 魔王は肩を怒らせて歩きだし、魔物は全員揃って大きな溜息を漏らした。 その時、何かが魔物の脚をポンポンと叩いたので、そちらに視線を向けると、魔王の隣に居た筈の男の子……昔の俺が心配そうな表情で立っていた。 「…大丈夫?」 『リュヌ様…! 大丈夫と申しますと…?』 魔物が丁寧な口調で尋ねると、昔の俺はか細い声で呟いた。 「溜息…ついてた」 『あぁ…。心配を おかけしてしまいましたか…。 我々は大丈夫ですよ』 魔物は鋭い牙を覗かせ、ニカッと笑ったが、『しまった!』と呟いた。 笑った顔を見て、昔の俺が怖がると思ったんだろう…。 だが、昔の俺は「なら、心配ない」と言って、魔物に はにかんだ笑いを向けた。 魔物は驚き、怖ず怖ずと尋ねる。 『リュヌ様、我々が…魔物が怖く無いのですか…?』 昔の俺は迷う事なく頷き、微笑する。 「だって、僕自身のほうが なによりも怖いもん…」 .
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