紅き月光を浴びて…

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『ご自分自身が…?』 キョトンとして聞き返す魔物に、昔の俺は頷いた。 「いくら魔力があっても、それを操れないんだ…。 それで よく、お母さんに怪我させちゃったから……だから僕自身が怖い…」 誰かを…たとえ嫌われていようと、自分にとって大切なものを傷つけたくないという気持ちは…今でもある。 昔の俺は眉を八の字にして俯いてしまった。 「…大丈夫よ リュヌ。 私が魔力を操れる様に訓練してあげるし、誰も傷つけさせやしないから」 魔王は昔の俺の前にしゃがむと、俯いている顔を両手で すくい上げる様にして 前を向かせた。 「魔王様…―――」 「リュヌ、貴方は今から私の息子になるのよ? “お母さん”って、呼んでほしいな」 昔の俺は目を真ん丸にして、暫く迷っていたが、やがて「…はい」と小さく言った。 「よし! じゃ、魔界に帰るわよ! あ、リュヌは人間だから このままじゃ まずいわよね。 “加護の魔法”をかけるわ」 そう言うと、魔王は昔の俺に向けて指をパチンと鳴らした。 暫くして、昔の俺の体が光り輝いたかと思うと、徐々に修まっていく。 「これで よし! じゃ、いくわよ」 太陽の様に明るく暖かい笑みを浮かべた魔王を見て、昔の俺も 満面の笑みを零した。 .
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