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―――昔の俺…、こんな無邪気に笑ってたんだな…。
俺は瞳を ゆっくりと閉じ、頬を伝う雫の温かさを感じたが、突然 体が傾き、闇の中へと落ち始めた。
―――!?
なんだ…!?
いつの間にか記憶の断片は俺から抜け出し、遥か頭上で輝いている。
―――嫌だ…!!
まだ…まだ見ていたい…!!
俺は必死に腕を伸ばすが、体は否応なしに 闇へと落ちていった…。
☆☆☆
「………!」
―――…? 誰だ、俺を呼ぶのは…?
「………さま!」
―――女の声…? またティグルが女に化けてんのか…?
「リュヌ様っっ!!」
今まで朧げにしか聞こえなかった声が、リュヌの耳に はっきりと届いた。
リュヌは一気に目を見開き、肺の中にあった空気を全て吐き出した。
「…ゆ、め…?」
リュヌは手を額に当て、深呼吸を繰り返す。
体は汗だくで気持ち悪く、頭がズキズキと痛む。
―――…気持ち悪い…。
リュヌが体をベットに深々と沈み込ませると、枕元から 先程 自分を呼んだであろう声が響く。
「大丈夫でございますか リュヌ様!?」
痛む頭を押さえながら見上げると、一人の女性が 心配そうな表情で佇んでいた。
真ん中で均等に別けられた真紅のウェービーロングの髪と瞳、薄紅色の唇からは、鋭い牙が ちらりと覗いている。
整った端正な顔は蒼白になり、冷や汗を流していた。
「あぁ…ビルフォニアだったか…」
リュヌが微笑すると、ビルフォニアと呼ばれた女性も微笑した。
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