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6月に入ったが晴れの日が続いている。
朝。
カーテンの隙間からゆるゆると朝の日差しがもれている。
今日もきっと晴れるんだろう。ぬるい布団の中でぼぅっと考える。
そのままのぼぅっとした頭で、枕元にある時計を見る。
6時59分。
よし、今日も勝った!
布団から起き上がり、勢いよくカーテンを開ける。
「にぃ、起きろっ!朝!」
隣に敷かれた布団からもじゃもじゃ頭が半分出ている。
「う…ん…」
「ほら、朝だって!」
いつもの朝のように、窓の柵に置かれている花たちに水をやろうとして窓を開ける。
「ケンジ…眩しい……」
「朝食当番はマサ兄の番だろー」
そう声をかけて、俺は優雅に朝の水やりタイムだ。
「窓…閉めて…」
マサ兄は朝が弱い。
「しょうがねぇなぁ…」
仕方なく窓を閉める。水やりタイムは終わりだ。
「閉めた?」
毛布の間から薄目でこちらを伺っている。
「閉めたよ」
「そう…」
マサ兄はまた布団に包まってしまった。
バカバカしくなった俺はカーテンまで閉めてやった。
そしてバカ兄貴をまたぎ、洗面所へ向かった。
この部屋は1DK。玄関から入って左に台所。右に風呂と洗面所がある。
ボロいアパートだが、風呂とトイレは別だし、2階で日当たりもいい。
至る窓やドアには磨りガラス。壁という壁は砂壁がふんだんに使われている。
タオルに延ばした俺の左手はなぜか空を切った。2、3回手をかくと硬いものに指の先が当たった。当たった場所にゆっくり手を掛けると表面は柔らかく、温かい。
「それ、俺の腕」
マサ兄の声がして、目を開けてみると俺の手はマサ兄の腕をがっつり掴んでいた。
びっくりしていると、マサ兄は得意満面に笑った。
「横に立ってることも全然気付かないんだもん」
「ガキかよ!」
タオルを引ったくると乱暴に顔を拭いて、マサ兄の胸に押し付けた。
「27はまだガキなんだよ!」
マサ兄はロッキーのテーマを歌いながら、洗顔せっけんを泡立て始めた。
「こんなデカイ子どもいねぇだろ…」
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