ラスト・キス

約束 いち

マサ兄は確かにガタイのいい体をしている。暇があれば筋肉トレーニングに励み身長も190ｾﾝﾁ近い。小さい頃から背の順ではずっと一番後ろだった、と言っている。
中2で180ｾﾝﾁは越えており女の子にモテモテだったらしい。マサ兄が言ってるだけだから嘘くさいけど。
ことあるごとに「天井に頭がつく」とか「日本の建築は俺の体に合わない」とか言ってる。このアパートの問題なんじゃ…

マサ兄専用の棚にはずらりと映画ロッキーのDVDが並んでいる。
そして今のマサ兄の髪型はあの映画の中のシルベスター・スタローン、そのものだ。

顔を洗い終わって肩にタオルを掛けたまま、台所に行くと冷蔵庫から牛乳を取り出す。マサ兄の毎朝の習慣。

「お前も飲む？」

空のコップをマサ兄が差し出す。

俺はお腹が弱いので朝は基本的に冷たい飲み物は飲まない。

「…いらない」

「そんなことじゃデカくなれないぞ」

マサ兄こそ、これ以上でかくなってどうするつもりなんだよ。最近、Yシャツの釦がしまらないとこぼしていた。

マサ兄を見るとコップに牛乳を注いで一気に飲んでいる。

俺にはあの卵を一気するｼｰﾝと被ってならない。
意識している…俺はそう思ってる。