『侵蝕(しんしょく)』

転院

その間私は何もしなかったかと云えばそんな事はなくて。

実は暫く前から母親は痴呆じゃないかと思われる節が多々あった。

それほど頻繁に実家に顔を出していた訳じゃないから程度の程は分からなかった。

それが父の入院に伴って、今は母親１人では心配だからとほぼ１日置きに実家へと行く様になった。

だけどそれは私の想像を越えていたんだ。
昨日話した事を何度も聞く。
日取り、予定を覚えてない。

私の問いかけに対して返事が噛み合ってない。

…これが痴呆というものなんだろうか。

話には良く見聞きしていたけれど、実体験としては初めてな私は今、戸惑いと模索の中にある。