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それからしばらくして、とある山村アミタナの酒場に、先程の青年の姿があった。
彼の名はセオ・ディウェルソン……。
ボサボサの癖のある紫髪に藍色のジャケットを身につけ、腰に金色の剣を栞代わりに挟んだ本『クリフェトンの書』を枕にしてカウンターで寝息をたてている。
彼はコレクターと呼ばれる旅の収集家であり、彼のコレクションは全て希少価値の高い武器が多く保存されている。
例えば、廃れた王家に代々伝わっていた伝説の剣。
所有者に不幸を呼び込む呪いの刀。
獣の毒が染み込む素材から作り上げた蝕みの大剣。
等々……。
それらのコレクションは全て本のページに収められている。
デュバルムのお宝の完全収集こそが、セオの旅の目的でもあるのだ。
そんな中、未だに眠り込んだまま動かない彼の肩を、一人の青年が掴み揺り動かす。
「おいセオ、いつまで眠る気だ?」
「ん、あぁ、レナードか」
その言葉にセオも眠い目を擦りながら、レナードと呼んだ青年に向き直る。
背中まで伸びる長い赤髪を後ろで一つにまとめ、上質そうな黒皮の薄いロングコートを身につけている。
見るからに生真面目そうな表情を見せる青年の腰には、二本の太刀が収められていた。
そして、その瞳は目の前のセオを呆れた表情で見つめたまま、溜め息をつくとともに言葉を告げる。
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