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◇ ◇ ◇
「……さき…さま」
誰かが私を呼んでいる。
迷惑な話だ。こんなに気持ち良く眠っているのに、邪魔されるなんて。
「……真咲さま……」
この声、誰だったっけ?
うーんと…えーと……
いいや、面倒くさい。
考えるのはやめやめ。
「お目覚めくださいませ、真咲さま」
声は諦めず、予想外にしつこかった。
……うるさいなぁ、もうちょっと寝かせてよ。
「真咲さま……いやはや、毎度のこととはいえ困り申したな」
困ったというよりは、呆れたように小さく誰かが溜め息を吐く。
それから意を決したように、その人は布団を握る手に力を込めた。
「ええいっ!布団はもう被らせませぬぞ。ほらほら、ちゃんと起きて…」
頭から被った布団を無理矢理剥ぎ取られ、一気に私の体は冷たい空気に晒される。
「ちょ……ちょっと!寒いってば」
身震いしながら跳ね起きて文句を言うと、目の前の青年が困り顔で肩をすくめた。
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