305人が本棚に入れています
本棚に追加
――ベッドで眠っていた青年は、叫び声を上げて飛び起きた。
「クソッ! また“あの”夢か!」
全身に汗をかいた青年が、吐き捨てるようにつぶやいた。
青年は10代後半で、漆黒を思わせる髪と、深い底無しの闇のような瞳は男らしく、彼の整った顔立ちをより助長している。
彼は時間を確かめて更に嫌な汗をかいた。
すでに主人との朝食の時間になろうとしていたのだ。
明らかに寝坊している。
彼は忙しなく手を動かし、着替えを始めた。
そして瞬く間に着替え、黒いジャケットに腕通し、右腰にリヴォルバータイプの拳銃を、左腰にはオートマチックタイプの拳銃を吊って着替え終了。
まるで弾丸のように部屋から飛び出すと、少女の待つ部屋まで全力疾走した。
「ロキ、あんた今日は私を起しに来なかったわね。従者の務めを忘れた訳じゃないんでしょ」
17歳ほどの少女が朝食を前にして不機嫌そうに言った。
ひょっとすると待っていてくれたのかもしれない。
少年の主人たる少女は、艶やかな銀髪を腰の辺りまで伸ばし、瞳は透明感のある蒼色。
顔つきは気が強そうな、キリッとしているという言葉が実に良く当てはまる顔で、非常に垢抜けた美しさがある。
服装は、前をボタンで止めており、ボタンの周りにフリルをあしらった長袖のシャツと濃紺のズボンで身を包んでいる。
少女の姿は貴族家の当主らしく誇りに満ちていた。
最初のコメントを投稿しよう!