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理由を言えと問い詰めるような少女の蒼い眼差しを受けて、ロキ・ノウン・メイスフィールドは、あの悪夢のことを話した。
「また例の夢を視たのね。あんたが記憶を失うほど辛いことだったのは分かるけど、もう10年も昔のことじゃない」
「すまない」
「別にあやまらなくてもいいわよ」
そしてロキが頭を上げると、
「早く一緒に食べましょ」と、少女はにっこりと笑って言った。
「ありがとう、シェリル」
ロキは少女の前に座って、一緒に朝食を食べる。
少女が食らっているのは、焼いた肉片。つまりステーキだ。
ロキはいつものことながら、朝から肉なんかよく食べられるな、と目の前の肉食少女の食事風景を関心とも呆れともつかない目で眺めていた。
「ロキ、今日は魔法協会から大事な報せがあるから、朝食後、レイラと一緒に登城するわ」
シェリルは分厚いステーキを切りながら言った。
「おう。レイラのことだ、呼ばなくても来るだろう」
「もう来ています!」
その声の主は、部屋の入り口に立っていた。
声の主はシェリルと同い年で、後ろで束ねられた流麗な金色の髪も、大きな瑠璃色の瞳も、薄い花びらのような唇も、パーツごとに見ればまさしく深窓の令嬢だが、彼女の顔はきりりとした爽やかさと力強さがあった。
立ち姿は、か弱さや儚さからは程遠く、彼女の雰囲気には真っ直ぐで厳格なものを感じる。
細い体躯を包むドレスは、厳格な雰囲気を崩さない華やかさがあった。
「おはようございます、シェリル、ロキ」
「おはよう、レイラ」
「ああ、おはよう――って、いきなり現れるな!」
ロキは叫んだが、レイラに反省した様子はない。
「私はシェリルの騎士です。
シェリルの近くにいて、シェリルを守ることが私の使命なのですから、いつ私が居ようと構わないでしょう」
そう言うと、レイラはシェリルの右側に座った。
シェリルはステーキとサラダを、ロキはパン、ベーコンエッグ、サラダを食べ終えて出かける準備をする。
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