マジシャン

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大きな駅の改札口からはデパ地下にも繋がっているから、ただやたらに広い。 その広場のような通路の真ん中に、真っ赤な水溜まり。 そのまた中心には、一つの生首が行儀良く―そう言って良いものか―立座している。 生首は、目を開いているが表情は穏やかだ。だから、TVの企画かと思って緊張感無く覗いてくる人もいる。 だが、周辺に漂う血生臭さと異常さが、すぐにそれが間違いなのだと教えてくる。 茫然自失する人は、血溜りを囲むようにして続々と増えて行く。 中心で注目を浴びる生首は満足そうだ。 私一人が平静を無くした人混みの中で生首を見てる人達を見てるのだ。 冷静? そうではない。 少なくともこの人混みの中で、私だけがこうなった経緯を知っている。 だから、まだ周りを見る余裕があるのかも知れない。 いや、ひょっとすれば私だけが一番混乱しているのかも知れない。 だから、目の前の生首から目を逸らそうと周りを観察しているのか。 血溜まりの向こうに、倒れた男性の体がある。 先程まで生首と繋がっていた体は、まるでゴミのように打ち捨てられていた。 捨てたのは、他の誰でもない、体の持ち主であったあの生首だ。 つい数分前まで、生首はあの体に着いていた。 血溜まりの中にいる、あの穏やかな表情のままで。
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