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「…違う。あたし…裕太がいたらきっと…アメリカになんて行けないから。好きで好きでしょうがないから…」
「好きならそれでいいじゃないか。僕は羅夢の支えになるよ」
「それがダメなのよ…!」
溜めていた涙は
ボロボロとこぼれ落ちて
手は僕の服を掴んでいた
「世界的な歌手になる為の道はね、すごく厳しいの…!天てれのオーディションなんかより何倍も。あたし…口では簡単に夢、夢とか言って、実際は裕太に甘えてたんだよ。でもこれ以上裕太に頼ったら、あたし本当に歌手になれない…!」
「羅夢…」
「裕太は何も悪くないよ…。夢の為に大切な人を手放す自分がいけないの。でもあたし決めたから」
羅夢は涙を拭うと
少しだけ微笑んでみせた
「振り回してごめんね。手紙…書いてきたから、ちゃんと読んでくれる?」
「…うん」
僕に止める権利なんてなかった
こんな風に泣くまで悩んで
決断した彼女の気持ちを
無駄になんか出来なかった
「僕、羅夢のこと…本当に大好きだよ。別れてもこの気持ちは変わらないよ」
「ありがとう。あたしも同じ気持ち。裕太…大好きよ」
そう言って彼女は
まるで風のように
僕の元から去って行った
小さなハートが
一つだけ描かれた
シンプルな封筒を残して―――
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