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いつの間にか閉じていた目を開くとそこは何もない真っ白な世界だった。
ここがゲームの中らしい。
俺はちゃんと動くのか自分の手を見ようとして驚いた。
全裸だった!
最初に確認しようとしていた手はちゃんと動き、体は隅々までリアルそのままに再現されている。
どうやったのかは知らないが驚くべき事だ。
だが、それよりもっと驚いたのは服がないことだ。
恥ずかしさにどうしようかとどうしようも無いことを考えていると、ふいに後ろから声がした。
「こんにちは」
明るい女性の声に振り向くと、いかにも案内人というような、ちょっと受付嬢にも似た服装の女性が立っていた。
女性は俺と視線が合うとにっこり微笑んで、俺の今の状況には気にも止めない様子で喋り始める。
「『バーチャルメモリー』へようこそ。今からゲーム説明と設定を行いますがよろしいですか?」
「ちょっと待って下さい。あの…俺、服無いんですけど」
「はい。見れば分かります」
冷静に訴えたら、もっと冷静に返されてしまった。
見れば分かります、って…えぇ?それだけー?!
慌てだした俺に彼女は言う。
「私はただの案内役でしかありませんし、プログラムですから安心して下さい。別にどうとも思いませんし、設定が終わるまでそのままです」
微妙にズレた返答に苦笑しつつも、俺は質問する。
「設定が終わるまでって事は、終われば服着られるんですよね?」
「はい。そうです。最初にも言いましたが、今から設定を行います。よろしいですね?」
そうだった。俺が話を脱線させたんだった。
「はい」
手間かけてすみませんという気持ちをこめて、プログラムの彼女に答える。
ズレた考え方だが、俺は気にしないし、気づかない。
「では、始めさせていただきます。今から基本的な設定を致します。なお、今からの質問に対する答えは後で一切変更出来ませんので注意して下さいね」
問いかけの形で切れた台詞に、俺は無言で頷く。
「では、はじめに名前を決めて下さい。本名でも構いませんし、作って下さっても構いません。ちなみに、この名前はここで使われる事となりますので、自身で分かりにくい名前は避けた方が賢明です」
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