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「…ここかぁ。美羽がいつも言ってた『正門前の桜坂』って。すげぇ綺麗じゃん」
車から降りるなり、彼が感心したようにつぶやく。
中学を卒業して10年目の平成21年・春。
25歳になった私は大好きなひとと郷里の街へ戻り、立ち寄った母校の『桜坂』を見上げている。
「どうしても見たかったんだ。美羽がどんな所で育ったのか、どんな風景を見てきたのか」
そんな彼・桜井敦宏を私は自分にとって一番特別な場所につれてきた。
春休みで人影がほとんどない、十年前と全然変わらない校内を案内しながら歩くうちに、私の学年の卒業記念碑の前にたどり着く。
記念碑のまわりを埋めつくす、みんなの名前と言葉を刻んだれんがをひとつひとつなぞりながら何かを探す彼。
「お、あったぞ。MIWA・FUJIKI・・・何々・・・『REVOLUTION』?・・・なんでこの言葉を・・・」
とまどいの表情を隠せずにつぶやく彼に、
「あぁ、それね。…そのまんまの意味だよ」
私は苦笑いしながらつぶやいた。
十年前、願いを託して刻んだ言葉、
『REVOLUTION』=『革命』。
自分を変えたかった。さよならしたかったのだ。初恋と、何もできなかったいくじなしの自分に。
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