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「〈砕けろぉぉ〉。」
相手を殴る為に発せられたと思われた拳は、敵の目の前で軌道を変え、硬く厚いアスファルト舗装へと吸い込まれて行く。
砕け散る地面。
大小幾つもの破片が辺りに飛ぶ。
相手は攻撃を避ける為に大きくバックステップをしている。
それでも『相互干渉範囲』内。
『間接発動』は無い。
ならば、と彼は『直接発動』させる為に、自ら砕いたアスファルトの破片に直接触れ、『命令』を下す。
「〈撃ち抜け〉。」
意味を与えられた破片は、瞬時に向かうベクトルを変更、猛然と、与えられた『命令』通りに、敵へ肉迫する。
相手がバックステップしたとはいえ、その距離は僅か3m。
その破片の弾丸達は、一瞬にして敵を撃ち抜いた。
声すら上げず、倒れ、塵になる敵。
だが、その光景に違和感も覚えず、ただ彼は軽い溜め息を吐く。
「はぁ、また今日も繋いだか。それにしても、まったく。こんなに服をボロボロにしやがって。嫁さんに殺されちまうぜ。」
そう言いながらも先程の戦闘時の、死を身近に感じさせる発言とは違う、生を感じさせる雰囲気を、彼の言葉は発していた。
「だが、やはり最近おかしいな。何だってこんなに人形共が溢れてやがる。しかも能力の『効果範囲』が異常だ。一体何が始まるってんだ。」
そう言った彼の表情は厳しかった。
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