『真・羅生門』

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重い体、回らない頭。霞んだ目を開ける。 そこには見慣れた羅生門。 ばち ばち ばち ばち ばち ばち ばち 耳元に火のくべられている音が聞こえる。 げて げて げて げて 不気味な笑い声が近付いてきた。 下人を見下す老人の顔がそこにはあった。 ぐえっ ぐえっ ぐえっ 「コイツは久しぶりに「美味しそう」だ。 」 ぐえっ ぐえ ぐえっ あの夜 みた食人鬼。下人の体を異様なまでの力で引きずり火にくべようとする。 下人は畏れていた。怖かった。死に直面して、初めて死を畏れた。今まで身近に見ていた「それ」に脅えていた。
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