第二章 ~アズキ~

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県立品母西高校の入学式は、晴れやかな春の日差しの中行われた。 ヨーヘイは自分の所属するクラスを確認し、体育館へ入った。 1ーAは、人が少なかった。 まだ開式には早い時間ではあるが、やはりそれでも他のクラスよりも少なく感じた。 「福岡洋平」と書かれたシールの貼ってあるパイプ椅子に座る。 出席番号は16番のようだ。 体育館のステージには沢山の花で装飾してあり、まるであの献花台にそっくりだった。 外は快晴だったが、体育館の中は少し肌寒い。 ヨーヘイは両手で肩をさすった。 「この中、寒いよな。」 と、声をかけられて振り返ると、制服の学ランの上から、サラリーマンがよく着てそうな茶色の長いコートを羽織った男と目が合った。 「あ、俺福吉翔(カケル)って言うんだ。よろしく。」 「おれは福岡洋平。なあ、そのコート、暖かい?」 「欲しくてもあげないよ。」 ニコリと笑ってそう言う。 どうやらこのカケルという男、良いとこのお坊ちゃんのようだ。 見た目も高校生になるにはまだ早い感じがする。
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