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その満面の笑みが、今だに思い出されてくる。
ヨーヘイは古本屋を出た。
春先の暖かな風が頬を撫でる。
街路樹を見上げてみると、風になびいて大きく揺れていた。
ここ何日か、このような強風の日が続いている。
ヨーヘイは自分の心のざわめきが、このような映像を見せるのだと思うようになった。
不意にケータイのメール着信音が鳴る。
ヨーヘイはメールの内容を確認する。
送信者はアキラ。
ヨーヘイと良くウマが合う友達である。
メールの内容は『もうすぐ着く』という知らせだった。
一時間も遅刻しておいて、よく気軽にメールを送る事ができるなと、ヨーヘイは思った。
その間に、ヨーヘイは古本屋の隣にある花屋に寄る事にした。
そこで、目にとまった花をよく買うのだ。
今日は、綺麗なチューリップの束を買った。
「また花かよ。」
ヨーヘイは急に声をかけられたので驚いて振り向いた。
花屋の表にアキラがいた。
手には犬のぬいぐるみ。
「悪いかよ。」
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