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「悪い事はないけど、たまには違うもの選んでみたらいいだろ。」
ヨーヘイはアキラの言った言葉を無視するかのように、花屋を出て独りでに歩きだした。
アキラは少し不満顔でついて来る。
ヨーヘイたちは、街の中心にある駅に向かった。
ヨーヘイたちの暮らす品母(しなも)町は、見た目より田舎の街である。
その町の中心には品母駅がある。
駅付近は大型のショッピングモールや、高級品の並ぶ店などがあり、休日は人でごった返すほどだ。
しかし街から少しでも出ると、水田が広がっていたり、斜面にみかん畑があったり、寂れた漁港があったりと、田舎らしさを存分にさらけ出していた。
そんな田舎の駅で一ヶ月前、ある事件が起きた。
2月24日午前10時40分頃。
『品母駅連続通り魔事件』が発生。
犯人は三十代の男性一人。
刃渡り25㎝程のナイフを、次々と通り掛かる人に刺していった。
死者三名。
重軽傷者八名の大惨事となった。
被害者の中には十五歳の中学生もいた。
隈本翠華。
彼女はこの時、通り魔の餌食になったのだ。
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