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今日は、その忌まわしき日から一ヶ月。
ヨーヘイとアキラは、駅の東口に設置された献花台の前で足を止めた。
献花台には数々の花や、ジュース、ぬいぐるみ等が供えられていた。
アキラは手にしていた犬のぬいぐるみを、献花台にそっと置いた。
ヨーヘイもそれに続いてチューリップの花束を、まるで誰かに手渡すかのように静かに置いた。
「なあヨーヘイ、お前とスイカちゃんの思い出の品とかないのか……?」
アキラは胸の前で手を合わせたまま、ヨーヘイに聞いた。
「どうだろうな。」
ヨーヘイは、スイカがこの世からいなくなった事がまだ信じられなかった。
そのため、どうしても彼女との思い出を手放したくなかったのだ。
それに加え、手を合わせるような事や、墓参りなどは一切やらなかった。
スイカは生きている。
そう思える何かにすがりたい。
そのような気持ちを、アキラに言っても、返ってくる言葉はわかっていた。
自分の気持ちに素直になれない。
それほど、彼女の存在は大きかったのだ。
「そういやお前、バレンタインに貰ったアレは?」
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