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PM 9:00
テーブルに置いていた携帯を手にして、画面を開いた。
ここで、動きが止まる。
体に染み付いてしまった習慣がまだ抜けずにいる。
当たり前か。
昨日まで当たり前のようにやっていた日常のほんの一部分が欠けただけなのに、どうして、心は痛み苦しいのだろう。
PM 9:00
君のバイトが終わる時刻だって分かってる
いつもなら、電話して君の声を聞いていた。
夜道は危ないから、
自宅まで帰る君に心細い思いをさせたくないから、二人で明るい会話で笑い合った毎夜が恋しくてしょうがない。
せめてお仕事お疲れ様って、言いたいよ。
君の番号は携帯の中にはない。
頭の中なら、正確な番号が浮いている。
番号を押す勇気も、
適当に話す口実も、
君の声を聞く度胸も、
今夜から、消滅する。
長い長い魔法は解けたみたいに、
突如やってきたリアルと、いつか向き合う努力しなくてはならない
さらば
今宵の君よ
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