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PM 9:00
自転車のライトが故障した。
最悪の一言に尽きる。
家に辿り着くまで、街の電灯の明かりだけが頼りになった。
人気のない道を、自転車で走る。
PM 9:00
彼からの電話が鳴るはずだった。
彼との電話に夢中すぎて、周りがみえてなかったせいもあった。
私は今まで、なんて暗くて寂しい道をいつも通っていたのだろう。
心細い気持ちが広がる。
携帯を開き、
彼の番号に電話してみようと閃いた。
でも……
携帯を閉じた。
そう、彼とは終わったのだ。
ここはキッパリと断ち切らなくては。
彼の話す話題に、飽きなんてなかった。
バイトが終わった直後が、毎日楽しみだった。
お仕事お疲れ様の第一声が好きだった。
彼の番号は、携帯から消えていた。
頭の中で欠けているのは、下四桁の番号だけだった。
彼の声に繋ぐ魔法の呪文は、未完成のまま変化しない。
さよなら、
今宵の彼へ
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