溺れる、

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「ねえ、そこのお兄さん」  そのとき声を掛けられたような気がして顔を上げると、かき氷屋の男がこちらを見て微笑んでいた。  やはり昨日の男だった。何もかもを諦めてしまったようなこの顔。間違えるはずがない。 「かき氷買わない?」  男は俺を見てにっこり笑った。 「いくら」 「1つ200円だよ」  さっきの沢田の話が本当なら、昨日はやはり身体を売っていたということになるのだろうか。  こいつには気を付けろという忠告は、すっかり頭の中から消えてしまっていた。 「あんたはいくら」  男は少しだけ驚いたような表情を見せたが、またすぐに笑顔に戻って言った。 「1回3000円」  俺は財布から夏目漱石を3枚出すと、男に手渡した。

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