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「お兄ちゃん・・・」
視線を戻した先に、
俺はいねぇ。
これでいいのだ・・・。
はぁ。
疲れた。
体から力が抜ける。
脱力していると、父親がこいつの元へ走ってくる様子が見えた。
俺はあの一瞬でそばにあった生命へと、軽く登っていた。
身軽さも取り柄。
「だめじゃないか・・・」
父親はそう言いながらあいつを抱きしめた。
娘の姿に安心したんだろう、顔が泣きそうにも見えた。
そうだろうよ。
目を離しなさんな。
また溜息をつく。
・・・イヤだよ、こんなの。
そのまま、後ろの太くて、ごつごつした手触りのする生命に寄りかからせてもらった。
あったかいな。
おまえ達は・・・。
目を瞑ると、浮かんでくる。
あの姿。
おぼろげに。
あの顔・・・。
「・・・お兄ちゃん」
!
なんでだよ!
抜いてた力が一気に入り、俺はこの星の重力のままに下へ落ちそうになる。
あぶねぇ。
「お兄ちゃん・・・」
まだ言ってるのか。
なんなんだ。
変なやつ。
「お兄ちゃん? 誰だい?」
抱き上げたあいつと同じ目線になった父親が、不安げに話す。
「さっきね、いたんだ。怖くなかったよ。だってカッコいいの!」
・・・
バカだ。
ほら、父親も、おまえを呆れた顔で見てるぞ。
だけど・・・
あれは、子供を見る父親の愛情のこもった顔っていうんだろうな。
すげ~・・・ココロがあったかくなる顔だ。
その顔を見てると、安心して寝れるんだろうな・・・。
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