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煙草は既に燃え尽き、フィルターを残して全て灰と化していた。
作業中のファイルを保存し、パソコンの電源を落とす。
妙子は両手を頭の上で組んで、大きく背筋を伸ばした。
スウェットに豊かな胸が浮かび上がる。
首を左右に傾けて肩の凝りをほぐすと、隣の部屋の気配をうかがう。
壁を一枚隔てた和室で、一郎は生活をしている。
気配は既に感じられず、おそらくもう寝ているのだろう。
ふと時計を見ると、時計は間もなく二時を迎えようとしていた。
「もう寝なきゃ……」
妙子はがさごそと、カバンの中から、分厚い手帳を取り出す。
寝る前に明日の予定を確認する、妙子の習慣である。
「よし……寝よう……」
手帳の内容に満足すると、自分に命令するようにそう呟く。
そして簡単に身を整え、布団の中に潜り込む。
今日もきっと、夢は見ないだろう。
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